5日目 凍死の危機
2004年3月4日
寒い中の出発。先週まではやたら暖かかったくせにどうして…。
ものすごくどうでもいいことですが、昨日、焼山寺に行く途中に気づかぬうちに通っていたらしい美郷村。ちょうど同じころ、その村では、女優の水野真紀(関西だと毎日放送で番組もってるから知っている人もいるかも)が婚姻届を提出していたらしい。たしか、衆議院議員の後藤田なんとかって人と結婚したんだっけ?たしかね。
ああ、本当にどうでもいいな、この話題…。さっさと出発しようっと。
昨晩お世話になった民宿を出たところで、ここの中学生になる息子さんとすれ違った。
そして、これから学校へ行くため自転車にまたがろうとしている彼に、こともあろうか、僕は「いってらっしゃい!今日もがんばってな!」と声をかけてしまったのだ。
いや、別に悪いことではないんだけれど、無類の人見知りで、自分からは絶対に挨拶をしない(できない)僕が、ほとんど面識のない彼に声をかけるなんて前代未聞のことであり、自分でもびっくりしてしまった。
四国遍路を歩いていると自分が変わっていくのがわかる、と聞いたことがある。ひきこもりの子とか、すっごく内気な子が四国を歩いて帰ってきたところ、別人のように明るくなっていた。
そんな話を出発前に聞いたけれど、あれは事実なのかも…。だって、「いってらっしゃい!今日もがんばってな!」なんて自分から言うなんて、一週間前には考えられないことだもの…。
寒空の中、とんでもなく恐い道をびくびくしながら一人で歩く。
なんせ、トラックがびゅんびゅん走る道路のくせに歩道がないんだもん。さっきから何度かかすってるんだよねえ…。
そして道の反対側、つまりガードレールの向こう側はかなーり高い崖になっておりまして、例え僕の方に車が突っ込んできても僕は逃げ道がないのです。これはだめだよ。絶対そのうち事故起こるよ。
そんなことを考えていると、1台の車が横にとまり、なかのおじさんが「お遍路さん、のっていかないかい?」と声をかけてくれた。
ごめんよおじさん。僕はできるところまで徒歩で頑張りたいんです。なので今回は勘弁してください。そのようなことを言うと、おじさんは笑顔で車を発進させた。
しかし、四国というのは本当に不思議だ。お接待にしてもそうだが、どうして見ず知らずの人にそんなことができるのか?まったく面識のないその辺を歩いている人にお菓子や飲み物をあげたり、自分の車に乗せて次のお寺まで乗せていってくれたり…。僕だったら絶対そんなこと出来ないよなあ。四国って本当にすごい。まだ5日目、少ししか歩いていないけれどそう感じてしまう。
さて、今日の目的地、13番札所大日寺にはお昼すぎにはついてしまった。昨日の山道のおかげで筋肉痛になってしまい、かなりゆっくり歩いてきたつもりだったんだけど。しかし、今日の宿はここの宿坊と決めているので、先に進むこともできないし…。そんな途方に暮れている僕にどこからか聞き覚えのある声が。
『あんちゃんじゃないけ!あんたはやいなあ!もうきたのけ!』
おうふ…、昨日のおやじだ。昨日風呂でちょこっと聞いた話では、彼、野宿をしながら歩いているらしい。
「昨日の夜、寒かったですけど眠れたんですか?」
そう尋ねてみると、
『眠れん!めっちゃ寒いけえ、寝てもすぐに目が覚めよる!』
そりゃそうだろうなあ。昼間でもこんなに寒いのに夜、しかも山の中っていうんだから。
『それじゃ、俺はいくけん!あんちゃん気をつけてな!』
そういっておやじは出発していった。ああ、おやじも頑張ってくださいよ。絶対に生きて旅を続けてください。おやじが出発してしばらくすると、なんと雪が降ってきた。こりゃ今日の夜は寒いぞ…。おやじ、本当に生きていてくれよ。
さあ、僕も雪の降る中いつまでもつったていたら死んでしまうそ。
とりあえず宿の人にお願いし、荷物をいったん預け、先のお寺をまわることにした。13番から17番までは街中にあり、距離も1キロちょっとずつしか離れていないのだ。
そこで、14番常楽寺、15番国分寺を打つことにするが、今日はそこでストップ。筋肉痛で足が痛いし、なにせ寒い!雪が降っては止んではの繰り返し。もう限界…。
急いで14番、15番にお参りを済ませ宿へ帰還。
あー寒い寒い。早く暖かいお部屋に通してくださいよ、おばちゃん。
しかし、宿のおばちゃんは僕を『物置き』のような場所へ連れて行き、こう言った。
『急遽団体さんが入っちゃってねえ、悪いんだけどおにいちゃん、ここでねてくれんかねえ』
はあ、別に僕はいいんですけどね、見たところ、部屋にあるストーブ、だいぶ古そうなんですが夜つけっぱなしにしたら火事になるよね?それからこの部屋、えらく寒いんですけど…。そんで毛布も見当たらないし、用意していただけるのかしら?じゃないとたぶん僕は寒さで死んでしまうよ?ねえおばちゃん?あれ、いない…。
おばちゃんは、この毛布も炬燵もない、廊下から見ると明らかに物置にしか見えない極寒の部屋に僕を押し込み去って行った。
夜9時。テレビもないしすることがないので眠ることにする。結局毛布はなく、ストーブを消すとそこは極寒の世界。果たして僕は明日の朝、無事に目を覚ますことができるのでしょうか…。
本日の行程
神山温泉 → 怖い道 → 13番 → 14番 → 15番 → 13番宿坊泊
合計21キロ
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