22日目 土砂崩れの道
2005年3月4日
「土砂崩れおきてるきに、こっちの道行きなさいよ!」
あいかわらず元気な久百々のおばちゃんにアドバイスをもらい、39番に向けて歩き始める。土砂崩れが起きている危険な道を避け、安全な道を教えてくれるとは、何ともありがたいです。
出発前、2日分の代金を支払いに行くと、おばちゃんはこう言った。
「一泊6,000円やけど、2日で1万でいいき」
なんともありがたい。2食プラスお弁当まで作っていただいた上にさらに値引きまでしてくれるなんて…。
高知県の宿は、27番手前の宿や、須崎市のひかり、そしてここと、人情味のある暖かい宿が本当に多く、とても楽しかった。そういえば、室戸岬で泊まった民宿も、夕食時に宿の若い兄ちゃんがビールおごってくれて色々と語り合ったっけ。
その高知も今日でおしまい。明日はついに伊予の国・愛媛県へと突入する。
宿を出てしばらくすると、地元の中学生が挨拶をしてくれた。
しかし、高知というのは子供たちが本当によく挨拶をしてくれて、とても気持ちがよかった。昨日も、足摺岬からの帰り道で下校途中の小学生と出会ったのだが、みんながみんな大きな声であいさつをしてくれた。
最近の若い子らは挨拶もできん…
なんてことをいう偉い学者さんや編集者さんなんかがいてるけれど、そういう人らは田舎の子供たちのことを見ているのかしら。地方には見知らぬ旅人にすすんで挨拶をしてくれる若者たちがこんなにもたくさんいるということを、わかっているのかしら。まあ別にいいんだけど。
さて、久百々のおばちゃんに教えられたとおりの道をしばらく歩いて行くと、前方に何やら工事関係の車両と黄色い看板が見えてきた。
むむ…。
これは通行止めなんじゃないかな?だって明らかに黄色い看板に『土砂崩れにより通行止め』って書いてあるぞ。
道を間違えたのかしら?
「土砂崩れおきてるきに、こっちの道行きなさいよ!」
っておばちゃんは言ったんだから、道路が土砂で埋まったこんな道のはずがない。
僕は地図を取り出し、おばちゃんが教えてくれた道を確認していった。しかし、間違ってはいない。僕はおばちゃんに言われたとおりの道を歩いてきたのだ。
「おかしいなあ」
『通行止め』と書かれた看板の前で途方に暮れる僕。
しかし、その『通行止め』と書かれた看板には秘密があったのだ。
看板をよ~く見てみると、『通行止め』と書かれた横に、小さく手書きでこう書かれていた。
『ただし 歩行者を除く』
「ん!」
まさかここを歩いて行けというのだろうか。この明らかに土砂崩れがおきていて間違いなく危険な気がするこの道を、本当に私に歩けというのですか?
もう一度地図を見返してみる。
そんなはずない。土砂崩れが起きた道を普通勧める?そんな危険な道を勧めるかい?
しかし、おばちゃんに教えてもらった道は、何度見てもここに通じていた。
そっか。ここ歩くんだ…。
そういえばおばちゃん、道を教えてくれたとき、こんなことも言ってた気がする。
「土砂崩れおきてるきに、こっちの道行きなさいよ!車とおらんき」
この言葉は要するに、
「土砂崩れが起きているから、(巻き込まれると危ないので)こっちの道をいきなさいよ!車もそんなにとおらないから」
ではなく、
「土砂崩れが起きているから(通行止めになっていて車も通らないので)、こっちの道を行きなさいよ!(人間は通交禁止じゃないし)」
って意味だったんですね、おばちゃん。やっと承知いたしました、おばちゃん。車が通らないという理由で、土砂崩れに巻き込まれる危険性のあるこっちの道を勧めたんですね、おばちゃん。いやあ、日本語ってのは難しいねえ。
しかし、高知ってのは不思議の国だなとつくづく思う。だって、普通は土砂崩れの道なんて勧めないと思うけどなあ。
おばちゃんの言葉の真意を理解した僕は、(おばちゃんの優しさに感動したのではなく、土砂崩れの恐怖に怯えたことで)涙をめに浮かべながら、おばちゃんおススメの車の通らない(通るはずがないじゃん。だって道が土で埋まってるんだもん)道へと踏み込んでいった。
おばちゃんおススメのその道は、さんざん文句言った後に言うのもなんだけれど、思ったよりも快適な道だった。
土砂崩れが起きていたのは例の看板が立っていた入り口部分だけであって、あとは一切問題なかった。そして、ものすごく山奥を通っているのだろう、人工的な音は全く聞こえてこなかった。こう言うところを歩いていると例の恐怖体験を思い出してしまうけれど、幸いトンネルも現れず、僕は小鳥のさえずりのなか、口笛を吹きながらハイキング気分で歩いて行った。
そんな時である。
ゴーッ!という機械音が聞こえたかと思うと、僕の横を黄色っぽい車が走り抜けていった。突然のことで驚いた僕は思わず道端に倒れこんでしまった。走り去るその車の後ろには、国土○通省ってかいてあった。
えー車来ないって言ってたじゃん…。僕が歩いていたのは山側だったからいいけど、反対側だったら、30メートルくらいの崖に落ちていましたよ。ねえ、国○交通省さん。
その後、山奥になぜか一軒だけ佇む民家で飼われている野犬に襲われたり、突然現れたダンプカーをよけようとして崖に転落しかけたりしたりとなかなかのサバイバル体験をしたのち、山深い山村、三原村に到着。
この村、街中に信号が全く見当たらない不思議な村。まあ車ほとんど通らんしいいんだろうけどさ、ここで育っ子供なんか街でた時どうするんだろうね?交通ルールも何も。信号見たことないってんだからねえ。
そんな心配をしつつ、山奥の道をさらに歩くこと3時間、僕はついに高知最後の札所、39番延光寺に到着した。
室戸岬の24番札所から数えて16個目。長かったな、本当に…。
高知県を無事旅で来たことを感謝し、僕は札所をあとにした。本日の行程
久百々→三原村→39番→宿毛市内健康ランド泊 合計30キロくらい
楽しいおばちゃんのいる宿














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